奈良県の宿泊施設は不足していないように感じる件

今、奈良では観光客を増やす目的でホテルの建設が増加している。

 

最近では旧奈良県警・県営プール跡地に「マリオットホテル」を誘致するらしい。

 

橿原市の新市役所もホテル併設だそうな。 

 

宿泊施設を増やす理由は、おおむね以下の理由でなされている。

 

 

 

・近年観光客が増加している。

奈良県は全国でもワーストの宿泊施設数である。

・大阪か京都に泊まって日帰りになってしまっている(宿泊客を獲られている)。

 

 

というものだ。

 

確かにいかにもホテルなどを増やす根拠としてありそうな話ばかり。

 

だけど、本当なんだろうか?

 

宿泊施設が足りてないから、日帰りが多いのだろうか?

 

というわけで、今回は宿泊施設数が少ないのかどうかを確認してみた。

 

奈良県への旅行は日帰りが多いのか

 

まず奈良県の資料を見てみる。

 

奈良県観光客動態調査報告書(平成28年1~12月)】

Todo: Add Title.../奈良県公式ホームページ

 

上記の資料のP.7には奈良への旅行者の中で大阪・京都から日帰りで来ている比率が40%超とある。

 

これは大阪や京都に住む人だけでなく、そこに泊まってくる人も含むということで、この資料を見ると、特に大阪に泊まってくる人が多い印象を受ける。

 

また、P.6には平成28年の旅行者24,888千人の内、宿泊者は2,318千人】とあり、そうなると90%以上は日帰りでの旅行となっている状態であることが分かる。

 

なるほど、確かに日帰りが多いというのは確かなようだ。

 

では、次に宿泊施設がボトルネックになっているのかを確認してみたい。

 

奈良県及び近隣の府県の宿泊施設の状況

 

ここでは奈良県及び大阪府京都府の宿泊施設数と稼働率を確認することで、宿泊施設数がボトルネックになっているかを確認してみたい。

 

           
 
  奈良県 大阪府 京都府
 
宿泊施設数(H28年) 170 460 1,000
 
宿泊者数 H25 2,480 23,881 20,087
 
  H26 2,270 28,369 16,986
 
  H27 2,552 30,366 18,255
 
  H28 2,552 31,010 17,649
 
稼働率 H25 44.6% 76.2% 68.3%
 
  H26 42.8% 81.0% 67.7%
 
  H27 45.4% 84.8% 71.3%
 
  H28 45.9% 83.3% 67.3%
 
      引用:宿泊旅行統計調査

 

この資料は観光庁の資料から抜粋したものです。

 

これを調べていて自分が一番気になったのは、青字で記した箇所。

 

奈良県の宿泊施設の稼働率は毎年40%台!!!

 

ちなみに大阪は近年80%と非常に高い状態を維持しています。

 

京都も旅館の数が多くて、宿泊施設数は非常に多いですが、それでも稼働率は70%前後をキープしています。

 

この2府に比べて奈良県稼働率の低さは際立っています。

 

別の資料を見ても、奈良県稼働率は全国でも低い方に入っています。

 

つまり

 

奈良はホテルや旅館は足りている!

 

ということです。

 

こうなると、今まで何となく聞いていた話と違う印象が現れてきます。

 

③感想

 

今までは何となく言われたことを信じていましたが、少し数字に当たると違った側面が見えてきます。

 

稼働率が低いという事実は、自分としては以下の2つが要因として考えられると思います。

 

1.奈良に泊まるほどの魅力がない

2.施設はあるが、宿泊施設としての魅力が小さい

 

このうち、2が要因であれば、マリオットホテルのような上等なホテルを建設すれば改善する可能性があります。

 

しかし、仮に1が要因であれば、ホテルの建設はむしろ稼働率の低下に繋がる愚行となります。

 

また、2が要因であっても、その結果既存の宿泊施設の稼働率は更に低下する可能性が高いわけで、その辺りの配慮は大丈夫なんだろうか。

 

「いや、そこは自由競争だから」という意見も分かるが、ある程度は配慮しないとパワーゲームで負ける宿泊施設が出てしまうようにも思う。

 

果たして、どちらが要因なんでしょうか。

 

おそらく私に言われるまでもなく、業界の人々は色々研究されているのでしょうけど、気になります。