韓国のパシュート置き去りは何が問題か
平昌オリンピック、女子パシュートの準々決勝での韓国チームのゴールシーンを巡ってずいぶん問題になっているらしい。
これは朝鮮日報の記事なので、韓国世論を表していると思っていいいと思うが、激しい韓国内の反応を示している。
①そもそもパシュートとはどんな競技で、何が問題か
パシュートは単純に言えば
・距離は4km
・3人で1チームを組み、一緒に滑って一番遅かった選手の記録がチームの記録となる
・通常先頭が空気抵抗がきついので、入れ替わったりなどチーム内での協力が必要
という競技だ。
見ていて素人目にも分かるが、先頭交代などかなり息が合わないと難しそうだし、仲が悪く練習していない人たちがスムーズにできるとはとても思えない。
で、韓国チームの何が問題だったのかというと、大体以下の3つにまとめられているようだ。
・最後尾の選手を明らかに置き去りにして2人の選手がゴールした。
・試合後、先頭の2人は最後尾の選手が遅いせいで負けたという印象を与えるインタビューを行った。
・試合直後、うなだれ泣く最後尾の選手をチームの選手はもちろんオランダ人コーチ以外のチームスタッフすらも慰めることがなかった。
そして今韓国では「置き去りにした上、負けの責任を最後尾の選手に押し付けた」ように見える2選手に対するバッシングが激しくなっている。
まあ、確かに動画とかを見ても、明らかに離れてゴールしてるし、慰めるシーンがないのも確かなので、これは叩かれて仕方ないのかな?とも思う。
②何でこんなことになった?
さて、朝鮮日報の記事の中には、そもそも何故この最後尾のノ・スンヨン選手がこのような目にあわされたのか、について言及した部分がある。
盧善英(ノ・スンヨン)とスケート連盟の対立が明るみに出たのは先月、連盟の手違いによって盧善英の平昌五輪出場がかなわなくなった直後だった。連盟が五輪出場規定をよく理解せず、盧善英は個人種目での出場権を逃したが、その後団体追い抜きにも出場できないということが発覚した。盧善英は選手村を追われる羽目になり、自身のインスタグラム(写真共有サイト)で連盟を非難した。
その後盧善英は、ロシア選手がドーピング問題で出場できなくなったことで、1500メートルへの出場権を獲得して代表チームに復帰したが、歓迎はされなかった。対立を解消してチームをつくり上げるという雰囲気はなかった。ある実業団の指導者は「メダルの可能性がなくとも、体系的な練習をさせ、選手たちが再び仲良くやれるようサポートすべきなのに、連盟やコーチ陣はその役割を果たさなかった」と指摘した。
・ノ・スンヨン選手は一時オリンピックに出れなくなりそうになり、そのことで連盟側を批判していた。
・その後、何とか参加できるようになったが、連盟やチームからは白眼視されていた。
ということのようだ。
まあ、チーム側の気持ちは分からないではないけど、オリンピックという注目の舞台でその態度を出してしまったのは失敗だった、と言わざるをえないでしょうね。
③選手たちの言い分に聞くべきところはないのか?
問題は競技直後に行われた選手へのインタビューだった。キム・ボルムは「途中までは良かったが、後ろで(ノ・ソンヨン選手が)私たちと差が開き、少し残念な記録が出たようだ」と語った。ノ・ソンヨンの実力が敗因というような発言だ。
続いてパク・ジウは「競技場が騒がしくてコミュニケーションがうまくいかなかった」としながらも「実際、ソンヨン先輩がこのようになるという考えがなかったわけではなかったが、私たちも記録に欲があったので」と話し、論議を呼んだ。「チーム競技」より個人の記録を優先して滑走したという趣旨だ。
この記事を見ていて少し気になったのが、2つ目の発言。
「ソンヨン先輩がこのようになるという考えがなかったわけではない」ってどういうこと?
遅れるだろうと分かっておいていったとしか思えない発言ですね。
他の発言は、ラストスパートだから全力でいきました。結果、おいていくことになってしまいました、と取れなくもないですが。
ただ、もともとの実力に差があるのかもしれないと思って、一応各選手の自己記録を調べてみた。
世界スケート連盟のホームページから引っ張ったものです。
気付いたのは以下の点
・エースとされるキム・ボヌル選手は他の二人に比べても早い。
・ノ・スンヨン選手が自己ベストでは一番遅い。
・ノ・スンヨン選手だけ自己記録の記録年が少し前。
・逆にパク・ジウ選手は若いので、直近の大会で自己新を出すなど伸び盛り
つまり、元々二人はノ・スンヨン選手よりも早い上、衰えの見える同選手よりもまだまだピークの選手であった、ということです。
ということは、「3人の間には元々かなりの実力差が存在していた」ということです。
だとすれば、ラストスパートだから全力でいった結果、おいていくことになったのは、実力差を考慮すれば当然なのかもしれません。
「助けたりするのが普通だ」 という意見もありますが、そもそも練習してなければできないでしょうし。
問題があるとしたら、初めから実力差がハッキリあったのだから、ノ・スンヨン選手を真ん中に持ってくる、遅れだしたら助けるようにするなどを指示するのが適正な作戦であり、その作戦を立てるのは選手じゃなくて監督・コーチでは?と。
まあ、記事にもあったように、仲が悪いならそれを緩和してチームとして戦えるようにするのが、コーチなどスタッフの仕事だったのに、それを怠った。
ということが、この問題の最大の問題なんでしょうね。
こういうのを見ると、女子パシュートの練習シーンを見ると和みます。
仲良さそうやもんね。
④韓国国内で批判殺到・炎上中
例に漏れず、この問題は韓国内で大変な問題になっているようです。
先の朝鮮日報のホームページを見ても、この問題関連の記事がかなり多く挙がっていることからも、それはうかがえます。
しかし、なかなか日本では考えられない反応も多いですね。
記事に出ていたバッシングの内容は、
・「国民請願コーナー」という政府のネット上の国民請願掲示板に、置き去りにした2選手を「国家代表剥奪を申請」するという意見が出ており、14万人の同意が集まっている。
・スターだったキム・ボヌル選手がCMに出ていた会社に対し、契約を更新しないように圧力がかかり、実際のその会社は契約更新しない旨を表明した。
といったところ。
ちなみに青垣台掲示板では20万人の同意が集まると、政府からの回答を得られるそうだ。20日時点で14万人集まっていることを考えると、政府の回答が出る事態になりそうですね。
しかし、ここからは完全に自分の意見ですが、確かにコーチやチームスタッフの対応など批判されるべき部分は多そうですし、オリンピックという大舞台でやったことが問題を大きくしていることは理解しますが、
そもそもキム・ボヌルもパク・ジウもまだ若い人です。
百戦錬磨の政治家とかでもないのです。
普通の社会人であればまだ見習いという年齢でしょう。
そんな若い選手を国民全体で吊るし上げるのは、果たして正常なのだろうかと。
確かに息を合わせるつもりはなかったのかもしれないけど、「少しでも記録を伸ばそうとラストスパートで全力を出した」ということを、表現したのがあの会見だったのかな、と思わないでもない。
つまり、単純に選手は若くて未熟であるが故の失言であって、本当に批判されるべきは、連盟であったりチームを統括する人間ではないのかなと。
それに組織内のみんなが本当に仲の良いところなんて珍しいんじゃないかな。
まあ、この問題、お隣韓国の話題だけに、「あ、また出た。韓国の火病だ」と日本ではネタとしてかなり使われそうな気がするな。
しかし、こんな問題の後に試合して勝てるわけないよね。
きっちり3人並んでゴールしたあたり、意識はしてるんだろうけど。