シェアハウス投資問題、悪いのは誰か

どうも、ナルダルです。

 

最近、銀行に関する不正をよく耳にします(銀行以外もいっぱいあるけど)。

 

やはり一銀行員としては思うところもあるので書いてみます。

 

題材はスルガ銀行で、以下の記事。

 

headlines.yahoo.co.jp

 

不正ってどういう内容?

スルガ銀行の問題が発覚したのはシェアハウス投資に関わる融資においてでした。

 

不正の内容をまとめると

 

・預金残高の資産の水増し

・収入の水増し

・対象物件の賃料収入などを水増し

・頭金など購入条件の改ざん

 

といったところがよく書かれています。

 

いずれも「銀行が」不正をしたというより、「融資を申し込んだ人」が犯しそうな不正ですね。

 

まあ、いずれも購入者・借入人の条件を実態より良く見せることで、融資を受けやすくしていただろうことは間違いないところです。

 

この不正は誰主導?

先に書いたように、不正の内容を見ると「申し込む側」が何とか融資を引き出したくて、改ざんをするような項目ばかりに見えます。

 

そう考えると、不正の主導者は「融資を受ける側」、つまり不動産会社や借入人自身ではないかとなります。

 

しかし、一連の記事で問題視されている中で不動産業者もありますが、融資行であるスルガ銀行がかなり問題が多いとされています。

 

それは何故なんでしょうか?

 

不正項目だけ見るとスルガ銀行は騙された側に見えるので不思議です。

 

不正は実際は誰が行ったのか?

まずは実行したのは誰なのかを特定する必要があります。

そして、シェアハウスやアパート投資などにおいて、特にサラリーマン大家さんになろうとする人はかなりの比率で、不動産業者に融資手続きも委託しているケースが多く見られます。

 

曰く、「慣れているからスムーズ」「忙しい中、銀行に行く時間がない」「銀行の担当者と顔見知りだから話がしやすい」などと言われ、なるほどそうかということで、委託するのです。

 

そういったことを踏まえると、おそらく現実問題として書類を偽造したりしたのは、委託を受けた不動産業者であるケースは非常に多いのではないだろうかと思われます。

 

銀行員として窓口になれていないサラリーマンの人が事業資金を借りに来た場合、偽造などをいきなり考えているケースは非常に少ないですから。

 

銀行に責任はないのか?

新聞記事などでも、実行犯を不動産業者としているものは多いです。

しかし、そうでありながらスルガ銀行を非難しています。

何故でしょうか?

 

これは推測になりますが、おそらくスルガ銀行の中では融資残高を伸ばすことに対するプレッシャーは相当なものがあり、かつアパート・シェアハウス投資に対する審査は比較的ゆるかったのではないかと思われます。

 

そういったプレッシャーの中で、厳密に審査して落としていてはノルマの達成が難しい。

 

そういう心境の中で、担当者は書類を持ってきた不動産業者の担当者に「頭金が無いのは無理」「現預金が〇〇万円くらいないと」といった話をしていたのではないかと思います。

 

そういった審査情報を聞いた不動産業者は、審査に通るような書類を作成していたということではないかと思われます。

 

そして、スルガ銀行の担当者も「改ざんしているだろうな」とは思いながらもノルマ達成のために審査を通すために上げていた、ということだろうと思います。

 

そういった「暗黙の指示・了解」があっただろうことが非難の理由なのでしょう。

 

銀行が負うべき責任

銀行も所詮私企業です(一部の政府系を除いて)。

つまり、自己責任で業績を伸ばし、失敗すればその責を負います。

 

ちなみに銀行が負うべき義務のある責任とは何でしょうか?

 

・法律上の責任(銀行法、利息制限法、金融商品取引法等)

・株主に対する責任(業績悪化など)

・従業員に対する責任

・顧客に対する責任

 

さて、今回の問題はどの部分に該当するのでしょうか?

 

ひとつは「法律上の責任」でしょうか。

「審査をいい加減にしていた」というのは、銀行経営を健全に保つことを求めている行政や立法の期待を裏切るものです。

二つ目は「株主」「顧客」「従業員」に対する責任です。

「審査をいい加減にする」と貸倒リスクが高まります。貸し倒れが多くでると業績に影響が出るので、当然株主・従業員・顧客に影響を与えることが想定されます。

ここでいう顧客とは当該融資の顧客ではなく、その他の顧客のことです。

 

しかし、新聞やネットの記事には少し違った論調で書かれています。

 

対象のシェアハウスやアパート投資で失敗したのはスルガ銀行のせい?

多くの記事には「賃料が入ってこなくなって困ったサラリーマンなどが苦境を訴えている。スルガ銀行の不正融資の責任も重い」といった雰囲気の書き方も見られます。

 

しかし、借入人が苦境に陥っていることの要因は「投資が上手くいっていないから」であったスルガ銀行が多めに貸し出したことはその要因の一つでしかありません。

 

もっと言えば、借りるか借りないかは借入人が決めることで、銀行は「この金額まではOKですよ」と言うに過ぎません

 

つまり、スルガ銀行が不正な審査で多めの金額を融資する回答をしたときに、それを借りることを決意したのは借入人です

 

その後に上手くいかなくなって銀行を責めるのはお門違いではないかと思います。

 

もちろん、先に述べた責任がスルガ銀行にはあるので、社会的に許されるという意味ではないですが。

 

投資はあくまで自己責任

確かに借入人は「不動産業者などに騙された側面もあるかわいそうな人たち」なのかもしれません。しかし、それでも融資を受けること・買うことを決意したのは本人です。

 

騙されていたにせよ、シェアハウス投資などが上手くいかなくなった時点で資金繰りが破綻するような借り入れなどをしてしまったのは間違いないわけで、その点についてはやはり借入人の責任と言わざるをえません。

 

慎重な人なら「最悪賃料が半分になっても返せる程度にしておこう」とか考えるはずで、そうなら普通のサラリーマンが1億とかのお金をそう易々と借りたりできないはずです。

 

結局、安易に儲かるという言葉に踊らされたことが問題なのであって、第一の責任は不動産業者にあるにせよ、投資家の人たちの責任も重いのであって、一方的に被害者として捉えると、本質を見誤るような気がします。

 

ちなみにこういった不正融資は、社会が叩いたりしなくても、「お金が返ってこない=損失」ですから、銀行はしっかり自分の首を絞めています。

何も言わなくても責任は取らざるをえないのです。