読書レビュー②~魏志倭人伝・後漢書倭伝・宋書倭国伝・隋書倭国伝~
書名-魏志倭人伝・後漢書倭伝・宋書倭国伝・隋書倭国伝 中国正史日本伝(1)
出版社-岩波文庫
内容
中国の正史に書かれた古代の日本に関しての記述を抜粋し、紹介したもの。
有名な「卑弥呼」が登場する魏志倭人伝や遣隋使:小野妹子が登場する隋書倭国伝などの日本に関する該当箇所を抜粋し、その解説を行っている。
最初に各王朝の正史の成立年月を表で記し、王朝の順序と正史の成立年月日が前後しているケースがあることを指摘。
その上で、どの書の記載が前の正史の記載に影響を受けているかを説明した上で、価値のある記載のある部分だけを抜粋して解説に入る。
構成としては原文、現代語訳、原典の順序で記載しており、原文の方も不明な用語にはふりがなや解説を都度加えており、読みやすくなっている。
基本的に中国側の目線から書かれており、特に魏誌や後漢書では中国の極東であった帯方郡からどのように行くのか、その時どういった土地や国を通るのかを記載しており、その記載の解釈によって、有名な邪馬台国の九州説と大和説に分かれる。
入れ墨や服装、食事の仕方や埋葬の仕方など、当時の習俗についてもかなり詳しく書かれており、それらも都度解説を加えながら記載されている。
編者は基本的にはニュートラルな立場で記述しており、先の邪馬台国についても各説の主張を簡易ではあるが記載するなど、意見の分かれているところについては、分かれていることを記載しており、分かりやすい。
最後の隋書倭国伝では「日出ずる処の天子、書を日の没する処の天子に致す」の文言が登場し、誰でも教科書で見た表現が登場するなど、特別歴史に興味を持たない人でも惹かれるところもある。
感想
予想以上に面白かった。
基本的には各古文書を解説しているだけだが、原文に当たるというのは歴史を知る上で非常に重要なことだし、何より邪馬台国や小野妹子など教科書レベルの有名な出来事の記載が出てくると、やはり興味を持てる。
さらに当時の人々がどのように生活していたか、邪馬台国については「法が順守されていた」との記載、また気質が典雅であるなどの記載も、古代の日本を形式的には野蛮な国と見なしていた中華帝国の正史にそのように書かれていることも意外でした。
古代中国の王朝は、それだけ客観的に周辺国のことを観察し、評価していたということなんでしょう。
なかなか当時の超大国にはなれないでしょうから、当然かも知れませんが。
少しでも古代史に興味があればぜひ読んでみるべき本です。
自分も歴史好きのくせに読むのが遅かったと思いました。