日本の借金に問題がないという意見の不思議

日本の借金の多さについては色々な意見があって、「反対に資産があるから大丈夫」という意見もあれば、「世界最悪レベルでもうヤバイ」という意見もあってかなり両極端になっています。

 

銀行員の視点から言えば、確かに「貸借対照表上では日銀との連結では問題ない」という意見も分からないでもないのですが、それでも不思議な気持ちが残ります。

 

今回はあくまで私見ですが、ちょっとこの件について考えてみたいと思っています。

 

1.日本の借金は問題ないという意見について

日本の借金は1,000兆円を超え、これはGDP比でも空前のレベル。

しかし、この借金も問題ないという人たちが結構います。

 

私がいくつかそういった意見を見た限り、その論拠は「日本政府はその借金以上に資産を持っている」「借金の半分は日銀が引き受けており、連結で見れば借金は半分だ」「国民の資産が1,000兆円くらいあるから大丈夫」といったところかと思います。

 

いずれの意見もなるほどと思える部分もあります。

 

事実、日銀が半分借入を負担しているなら償却してしまえば、借入は一気に半分になります(そう簡単にはできないと思いますが)。

 

それに資産を持っているというのも嘘ではないでしょう。

 

けど、これってあくまで貸借対照表(バランス)の世界でしか見ていないような気がしてならないのです。

 

2.そもそも何故借金が増えているのか?

借金は個人にせよ、企業にせよ何かしらの事情があって行います。

個人であれば「家を買う」「車を買う」「生活費の補填」、企業であれば「設備投資をする」「運転資金を確保する」といったところでしょう。

 

それでは国の借金は何故増えているのか?

 

財務省の説明では、社会保障費の増加」が著しく、かつ「少子化の影響で歳入が減少傾向」ということのようです

また、「景気浮揚のための公共工事」などもそれに該当しそう。

 

国の国債はざっくり言うと「赤字国債」と「建設国債」というようなものに分けられていますが、どちらも借金は借金。

 

「いわゆる赤字を埋めている」か「設備投資のため」と色分けしているにすぎません。

 

しかし、ここで重要だと思うのは、そもそも借金は税収以上の支出をしていることによるという事実です。

 

家庭で言えば、収入以上に支出があるので借金をして回している状況ということです。

 

3.「日銀との連結だから問題ない」「資産があるから問題ない」という意見の不思議

 

私自身は国の資産状況などを細かく精査したわけではないので、細かいことは分かりません。

 

しかし、日本の財政は問題ない派の人たちの意見で単純に気になることがあります。

 

例えば、「日銀との連結で見れば問題ない」という意見。

 

確かに企業などでも「連結で見たら問題ない」という判断はありえます。

しかし、それは収支に問題ない場合の話です。

 

私から見れば、連結で見れば問題ないというのは、「今の時点では実質の借金は半分だから見た目ほど悪くないですよ」と言っているようにしか感じません。

 

確かに、今の時点では言われるほど問題ないのかもしれません。

しかし、支出に対して収入が不足しているという現実は厳然としてあるわけですから、いずれ問題になってくるわけです。

 

「国の資産・国民の資産があるから大丈夫」という意見も同様。

 

ハッキリ言って、それは「過去に儲かった分の蓄積があるからしばらくは大丈夫」と言っているにすぎない。

 

ということは、いつかは問題になるということです。

 

その辺りの話があいまいにされているようにしか感じられません。

 

4.赤字補填をしている状況は何とかしないといけないのでは?

 

国の財政状況は調べるのが大変なので、完全に把握できているわけではないのですが、現状は企業などで言えば「赤字補填資金」を調達している状況になるのではないかと思います。

 

銀行では「赤字補填資金」への融資は極めて厳格な審査が求められます。

当然です。

赤字を借り入れで埋めたって、どんどん資金はキツくなっていく一方ですから。

 

どこかで黒字化して借入が減らせる当てがあることが必要になります。

 

しかし、今の日本政府にそれがあるんでしょうか?

消費税増税などで歳入確保することがそれなんでしょうか?

 

財務省が銀行に対して、業況不振の企業に対する経営支援の参画を強く求めてきますが、その主要な手段は「経費の削減」です。

 

もちろん、売上・利益の拡大で黒字化できれば言うことはありませんが、普通悪くなっている会社は、それができずに苦労しているわけです。

 

なので、通常はまず経費削減で赤字を止めて、それから売上・利益の拡大の方向を考えるのです。

 

現在の日本政府についても同じことが言えます。

 

何かしらの手段で赤字を止めるべきなのではないでしょうか?

増税?それは過去の実績から見ても一時的な増収にしかなっていないことは明白です。

 

つまり、取るべき手段はおそらく経費削減しかないのではないかと思われます。

 

社会保障費の増加、防衛費の増加など色々な費用が必要なのはわかっていることですし、行政がやるべきこともあるでしょう。

 

しかし、全てを行政の責任としてやるのも限界があります。

役割を絞って対応していくことが必要なのではないかと銀行員目線では思うのです。