フリーランス女性に対する出産・産休中の社会保障
ナルダルです。
今日はヤフーの記事について考えたことを書いてみます。
フリーランスの女性たちが出産や産休の手当を要求している、という記事を見ました。
この記事のYAHOO!のコメント欄を見てみたが、ほぼ
・フリーランスに所得補償なんてありえない。
・フリーとは自由で縛られない分、そういった部分も自己責任で対応するもの。
というトーンだった。
確かに、そうだ。
しかし、そうやって一刀両断に切り捨ててよいものだろうか。
現在日本は出生率の低迷による人口減が大きな社会問題だ。
フリーランスの女性の出産に対する補償がないことは確かであり、それは出産そのものに取り組む意欲を奪っている可能性もある。
というわけで、ちょっとそのへんを検証してみたい。
尚、一応統計資料から当たってみたが、「フリーランス」という職業を特定するのは難しかったので、おそらく一番近いと思われる「専門・技術的職業」をフリーランスとして検証してみた。
①職業別の出生率や出産年齢に違いはあるのか
これを確認することで、職業別に出産率に違いがあれば傾向が掴めると考えた。
そんなわけで以下の表
その他が少し変な数値になっているのは、人口動態と労働力調査でそれぞれ含まれるのが微妙に違ったため。今回は一応関係ないので、何とか無視して頂きたい。
さて、総数での比率は「専門・技術的職業」2.13%に対し、全体で1.79%であるから、むしろ出産の比率は平均より高い。
そういう意味では専門・技術的職業の女性は出産をする確率が、全体で見ると高い。
とすると、フリーランスが不利な条件の下で出産できないということは、この資料からは言えない。
しかし、問題はあると思われる。
出産年齢についてはある程度、顕著な違いがみられる部分。
「専門・技術的職業」の女性の出産年齢は明らかに全体平均から見て高めである。
そうなると、生涯での出産人数は当然少なくなると想定されます。
これは何でこうなるのか。
ここからは私の仮説だが、大きく理由は二つあると思う。
・フリーの女性は一定の貯蓄が貯まるまで出産を控えている。
・フリーの女性はある程度仕事が安定しないと出産しない(復帰の懸念)
こんなところだろうか。
当然の不安と言えると思う。
さて、次は記事の内容について考えてみたいと思います。
これは結構難しい問題だと思う。
フリーランスの女性が出産をしにくい立場にあることは確かだろう。
しかし、YAHOO!のコメント欄にも多くの記載があったように、フリーランスとはそういった補償がないのが特徴でもある。
通常、会社に属している場合、法整備を受けているにせよ、産休や出産手当はあくまで福利厚生の一環だから、負担は会社が負う。
しかし、フリーランスの女性に、例えば記事にあるような補償を実施するとしたら、その主体はどこだろうか。
おそらく行政しかありえない。
でも、フリーランスの女性が出産が理由にせよ、「収入が無くなって生活に支障があるから行政が補償を行う」というのは、生活保護そのものだ。
まあ、だから記事の中に以下のような表現があるのだと思うけど。
「妊娠、出産、子育てにともなうセーフティネットは、働き方にかかわらず、誰もが利用できる公平な制度であって欲しい」として、出産にともなう休業期間中の所得補償である「出産手当金」(一定以上の保険料を納付している女性のみ)と産休中の社会保険料の免除を訴えた。ただし、育児休業中の補償は求めていない。
どうみても、「そんな都合のいい話があるか!」という批判をかわすための文言だ。
しかし、彼らが言う公平性の観点から言っても、「フリーランスの女性だけ行政から補償を受けられる」というのは公平ではないのではないか。
この提案を現実にするのは結構難しいのではないかと思う。
④出生率改善には検討すべき課題
と、ここまで否定的なことばかり書いてきたが、正直個人的にはいくらか補償は考えても良いのではないかと思っています。
その理由は、
・フリーランスの女性が出産をしにくいが故に出産年齢が遅く、そのためおそらく生涯出産数は少ないこと。
・この問題を解決することは出生率改善に寄与する可能性が高いこと。
ということ。
「フリーランスは自由を享受しておいて、出産の時は助けろとか勝手なこと言うな!」という意見は、かなり同感だし妥当性もあるにしても、実際にフリーランスの女性が「出産しにくいのだ」というなら、全体の制度の中ですくい上げる必要のある話なのではないかと思う。
そういう意味では、記事の中に出ていた
・出産手当金
・産休中の社会保険料免除
くらいは検討しても良いのでないかと思うのだが。
仮にこれで出生率が少しでも改善するなら、国にとっても将来的には貢献するはずだし。
とはいえ、いざ導入となったら出産手当金なんて、「こんなのじゃ少なすぎる!」って文句が出たりするだろうから、やっぱり難しいだろうか。